iDeCoでデメリットしかない場合【確定拠出年金は厚生年金が減る?】
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、投資で得られた利益にかかる税金がゼロにできます。それだけでなく、掛け金の全額が所得控除になり、給料から天引きされている税金を減らして年末調整で取り戻せるため、極めて節税効果が高いです。
しかし、制度の仕組みを理解しておかないと、場合によってはデメリットしかない状態となる可能性があります。このあたりを曲解して「iDeCoなんてやばい!やめとけ!」などと言う人もいます。
このページでは「デメリットしかない場合」から「加入者が死亡した場合」、「5,000円だけで意味があるか」といった内容まで徹底解説しています。
このページのもくじ
iDeCoでデメリットしかない場合
iDeCoでデメリットしかない場合には、所得控除を受けられない人が損失を出してしまったり、定期預金で運用して手数料負けとなってしまったり、といった例があります。
収入がないと所得控除が無駄になる
iDeCoの最大のメリットは、掛け金の全額が所得控除になることです。これによって給料から天引きされている税金を減らせます。たとえば、30歳・年収300万円の人が60歳まで毎月2万円ずつ積み立てした場合、合計で約100万円ものお金を取り戻せます。
言い換えれば、専業主婦(主夫)の方のように収入がない人は、iDeCoを使っても所得控除の恩恵が受けられないため、無駄になってしまうのです。
元本割れになると意味がない
iDeCoは受取時、各種控除を受けられるため、上手く使えば税金ゼロで受け取れます。専業主婦(主夫)の方がiDeCoで投資する場合は、この受取時の恩恵を狙うことになります。
しかし、最終的に元本割れとなった場合、そもそも課税口座で投資していたとしても税金を払う必要はありません。しかも、課税口座で投資していた場合は損益通算を使えるのに対して、iDeCoの場合は使えないため、デメリットしかないです。
(参考:【つみたてNISAの落とし穴】デメリットしかない場合とは?)
定期預金だと手数料負けしてしまう
iDeCoは、投資信託のような元本変動型商品だけでなく、定期預金のような元本確保型商品でも運用できます。しかし、定期預金で運用しても、年0.001%程度しか金利がつきません。
iDeCoを使うには手数料を支払う必要があり、加入時に2,829円、運用中に毎月171円※かかります。
※ネット証券で積み立てる場合
よって、iDeCoを定期預金で運用するとほとんど運用益が見込めず、手数料負けとなってしまいます。所得控除を受けられる会社員の方であれば定期預金も選択肢として考えられますが、収入がない専業主婦(主夫)の方がiDeCoを定期預金で運用するのはデメリットしかないことです。
やらないほうがいい制度なの?
ここまでiDeCoについてデメリットしかない場合の解説をしてきましたが、iDeCoはやらないほうがいい制度ではありません。
会社員の方にとっては、給料から天引きされている税金を減らして年末調整で取り戻せる上に、投資で得られた利益にかかる税金もゼロにできる極めて節税効果の高い制度です。
専業主婦(主夫)の方であっても、運用益にかかる税金をゼロにできるためお得な制度だと言えます。
デメリットを回避するための対策
大切なのは、デメリットしかない状況にならないように対策を練っておくことです。たとえば、手数料負けしないため、定期預金にこだわらず投資信託での運用を考えましょう。また、元本割れとならないため、計画的に長期投資することも重要です。
専業主婦(主夫)の方は所得控除を受けられないため、よく考えてから加入することをおすすめします。また、つみたてNISA(積立NISA)を利用していない方は、どちらを優先すべきか検討してみましょう。
加入者が死亡した場合は?
iDeCoは加入者が亡くなった場合にも税制優遇があります。
iDeCoで積み立てられた資産は、加入者の遺族が手続き(裁定請求)することで「死亡一時金」として受け取れます。みなし相続財産として相続税の課税対象になるのですが、一定額※まで非課税となります。
※500万円×法定相続人の数
注意点
みなし相続財産となり税制優遇を受けられるのは、加入者が亡くなってから3年以内に死亡一時金を受け取った場合です。また、5年以内に裁定請求がされなかった場合、「死亡一時金」として受け取れなくなり、相続するための手続きが複雑になります。
iDeCoは加入者が亡くなった場合でも、積み立ててきたお金がムダになることはありません。むしろ相続税の優遇があります。早めに手続きができるように、あらかじめ情報を共有しておくことが望ましいでしょう。
5,000円だけでは意味ない?
iDeCoは少額だったとしても、やらないよりやったほうがいいです。
iDeCoは月5,000円からはじめられます。たとえば、30歳・年収300万円の人が60歳まで毎月5,000円積み立てた場合、年3%の利回りで運用できたとして約290万円を用意できる計算となります。
また、所得控除によって年間9,000円程度の節税ができます。
iDeCoで運用中にかかる手数料は毎月171円、年間で2,052円です。月5,000円の掛け金だったとしても、手数料より節税効果のほうが大きくなります。
掛け金が多ければ多いほど節税効果は大きくなりますが、月5,000円でも「意味ない」などということはありません。
iDeCoに加入すると厚生年金が減る?
iDeCoに加入しても、将来受け取る厚生年金が減ることはありません。厚生年金を減らす可能性があるのは、iDeCo(個人型確定拠出年金)ではなく、企業型DC(企業型確定拠出年金)です。
選択制DCの仕組み
企業型DCには、給与の一部をそのまま受け取るか、確定拠出年金の掛け金に充てるか、従業員が選べるタイプがあります。これを選択制DCといいます。
「確定拠出年金の掛け金に充てる」ことを選んだ場合、社会保険料の負担が減ります。ただし、これは裏を返せば、「給与の一部をそのまま受け取る」ことを選んだ場合より、将来受け取る厚生年金が減るということになります。
iDeCoの掛け金は、社会保険料に影響しません。よって、加入にあたって年金が減る心配をする必要はありません。
iDeCoでデメリットしかない場合は、所得控除を受けられない人が損失を出してしまったり、定期預金で運用して手数料負けとなってしまったり、といったケースです。つみたてNISAを利用していない方は、優先すべき制度を検討してみましょう。