基準価格が高いファンドは運用力が高い?
中長期的に値上がり益が狙える“運用力が高い”投資信託を選ぶポイントとして、「基準価格の高さ」がしばしば挙げられます。基準価格は、投資信託の値段のことで、「投資信託の資産のうち、投資家が所有する分(純資産総額)を総口数で割ったもの」になります。
一般的な投資信託は基準価格10,000円から運用を開始していますので、これより基準価格が高いということは、これまでの運用によって資産を増やしてきたことを意味します。よって、基本的に基準価格が高いファンドを選ぶのは間違っていません。
ただし、その場合は以下の点にご注意ください。
設定日しだいで基準価格は大きく変わる
運用設定日が異なるファンドについて考えてみましょう。仮に2006年に運用を開始したAファンド、2009年に運用を開始したBファンド・Cファンドを設定します。(ファンドの運用力はA=B>C)
たとえば、運用力が同じファンドでも、リーマンショックが起こる前に設定されたAファンドと、リーマンショックが起こった後に設定されたBファンドでは、現在の基準価格は大きく異なります。
当然ながら、全体的に株価水準が高かったときに設定されたAファンドの現在の基準価格は、Bファンドの基準価格を大きく下回ります。さらに言うと、Aファンドより運用力が大きく劣るCファンドでも、リーマンショック後に設定された場合、基準価格はAファンドより高くなっていることが十分に考えられます。
このように、設定された時期によって、基準価格は大きく変わってきますので、基準価格を見て投資信託を選ぶときはご注意ください。
分配金を出す出さないかで基準価格は大きく変わる
投資信託が分配金を出すということは、それだけ投資信託の保有する資産が減ることになりますから、当然ながら、基準価格もその分下がってしまいます。これを何年も続けていった場合、同じ日に設定された同じ運用力を持つファンドでも、分配金を出さないファンドの方が、分配金を出すファンドよりも基準価格は高くなっています。
このように、分配金を出す出さないかによって、基準価格は大きく変わってきますので、基準価格を見て投資信託を選ぶときはご注意ください。ちなみに、分配金をよく出すファンドは損をしやすくなっています。詳しくは、毎月分配型投資信託が損するしくみで説明していますので、興味のある方はご覧ください。
投資信託の運用力を比較するならトータルリターン
これまで説明してきたように、同じ運用力を持つファンドでも、設定日や分配金しだいで基準価格が大きく変わってきます。よって、基準価格を見るだけでは、その投資信託の運用力を比較することはできません。
そこで私がおすすめしたいのは、トータルリターンです(証券会社のホームページでも見れます)。トータルリターンは、基準価格の増減だけでなく、配当も加味した増減率[%]で、純粋な投資信託の運用力を示したものと言えます。また、トータルリターンは設定来からだけでなく、現在から過去の一定期間ごとにも表示されているので、設定日に関係なく運用力を比較することができます。
このように、トータルリターンを見ることで、各ファンドの運用力をかんたんに比較することができます。これまで基準価格を参考に運用力を見ていた方は、ぜひトータルリターンも利用してみてください。
この記事の執筆者
やさしい投資信託のはじめ方編集部
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